大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和24年(つ)280号 判決

【主文】

原判决を破棄する、

被告人を懲役三ケ月に處する。

但し、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶豫する。

【理由】

控訴趣意第一點について。

原判决の法律適用の部分を見ると、原判决は、當初『よつて昭和二十二年政令第百六十五號第三條第一項、第一條第一項、刑法第六條、第十條、第二十一條を適用して云々』と記載していたところ、後にこれを訂正し右のうち刑法第六條、第十條の八字を削除していることが明らかであつて、右訂正後の記載によればなるほど原判决に適用せられた第二十一條は所論のように一見前記政令のうちの條項のような處があるのであるが、右訂正前においては第二十一條は刑法第二十一條を指していたことは右訂正の經過からみて疑なく、なお右政令は所論のとおり第一條乃至第三條のみで成り立つているのであつて、同政令に第二十一條という條項は存在しないこと並びに原判决は主文において未决拘留日數の本刑算入をしているにも拘らず、右第二十一條のほかに刑法第二十一條を適用した形跡がないことから考えると、原審判事は、判决を訂正するに當り、刑法の文字の次の第六條、第十條の文字のみを削除し、刑法の文字を存置すべきであつたのに、誤つて刑法の文字まで削除したため、第二十一條については。法律名を失い、あたかも前記政令の條項のような觀を呈するに至つたにすぎないのであつて、もとより原判决記載の第二十一條は刑法第二十一條を指すことは明白であるから、原判决には所論のような違法はなく、しかも右の程度の判决の誤記は未だ原判决を破棄せねばならないほどの重大な瑕疵とはいゝ難いから論旨は理由がない。

同第二點について。

原判决が事實認定の證據として、被告人の原審公判における自白と司法巡査大内田留吉作成の差押調書の記載とを擧示していることは所論のとおりである。しかして、文書の形式及び内容からみると、所論押收目録は獨立の文書ではなぐ所論差押調書の一部をなすものであると認められるから、原判决が證據に採用した差押調書には押收品目録を含むものと解するのが相當であり、しかも、右差押調書には昭和二四年五月四日伊集院警察署において所有者である被告人が差し出した米軍用作業衣袴下(この袴下はズボンの意昧に解し得られないことがないことは後に説明するとおりである)二七枚を差し押えた旨の記載があつて、右記載は被告人の原審公判における自白に對する補強證據としての價値あるものと考えられるから、原判决には所論のような違法は毫もない。論旨は理由がない。

同三點について。

袴下という言葉は舊軍隊用語に從えば、ズボン下を意味することは所論のとおりであるが、原判决に採用せられた差押調書末尾の押收目録には、單に袴下と記載しているのではなく、『米軍用作業衣袴下』と記載しているのであつて作業衣というのは普通外部に着用する衣服を指稱するものであることから考えると、右差押調書にいう袴下は必ずしもズボンの下に着用するいわゆるズボン下を指すものではなく、むしろ外部に着用するズボンの意味で記載したものと解し得られないこともないから、原判决には所論のような事實と證據にくいちがいがあるとはいえない。從つて、この點の論旨も理由がない

同第四點について。

よつて、訴訟記録及び原審で取り調べた證據に現われたすべての事情を綜合して犯情を勘案するに、原判决の刑の量定はやゝ重きに失し不當であると思われるので、この點の論旨は理由がある。

以上の理由であるから、刑事訴訟法第三九七條、第四〇〇條但書によつて原判决を破棄し、當審において更に判决をすることゝする。

よつて、原判决が確定した事實に法律を適用すると、被告人の原判示所爲は、昭和二二年八月二五日政令第一六五號第三條第一項、第一條第一項に該當するから、定められた刑のうち懲役刑を選擇し、その刑期の範圍内で被告人を懲役三月に處し、情状により刑の執行を猶予するのを相當と認めるので、刑法第二五條によつてこの裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予することゝする。

よつて主文のとおり判决する。

裁判官 白石要 竹中義郞 山下辰夫

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